どくしょかんそうぶん
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「ディア・ハンター」を観た
(結構前に鑑賞したはずなのだが、書き掛けで放置されていた?ので半端に公開)
ネタばれもりもり
なんとなくタイトルを耳にしたことはあった。DearHunterだと思っていたが、DeerHunterだった。鹿。あのメリル・ストリープの出世作と言われても、ピンとこない。調べたところ、彼女の出演している映画で観たことあるの一個もない。はじめまして。いわゆる「ベトナム戦争もの」なのだが、戦場で大爆発したり銃を撃ったりに重きを置いた作品ではなく、じんわりと味わい深いストーリーの作品になっている。
いつものようにぼんやりと視聴を初めて、結婚式の場面がずいぶんと長いと気づく。見ているうちに残り再生時間が気になってくるほど、テッテ的にいつまでも続く。若者ばかりでなく、老夫婦もすっかりパリピになっておられる。みんなこんな乱痴気騒ぎするもんかね。あちらの文化はそういうものかなと納得するものの、少し奇異に映る。実際、あちらの人が見てもちょっと奇異に映ったりはしないかな?というのも、作中の背景がある。登場人物は、結婚式を挙げてすぐにベトナム戦争に赴くという状況。もぉまぢやけっぱちの狂乱でも始めてしまえといったところだろうか。当時はアメリカ中がそういう雰囲気だったのかもしれない。
結婚式が終わり、みなが家路につく。場面は唐突に戦場に変わる。この切り替わりが妙に気に入った。彼らは戦場で捕虜となってしまい、仲間同士で銃口を向けあうロシアンルーレットを強要される。狂気の遊びに興じるベトナムの兵士は、満面の笑みで本当に楽しそう、このようすが…結婚式の参加者たちと同じで。
場面は進み、クライマックスのシーンで狂乱に包まれる。オチが見えてしまう展開で、見えた通りのオチになってしまうんだけど、あの長々と描かれた結婚式。これもまったく同じ狂乱だったなと思い当たる。新郎新婦を祝っているふりをして、嗤っていたんだ。間抜けな面と装いで将来を夢見ている阿呆を指さして嗤っていたんだ。みんなで大笑いして楽しむんだ。
人間が必死で生きようとする姿の滑稽なこと。
鹿はただ静かに佇んでおりました。
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「イラストでまなぶ!戦闘外傷救護(増補改訂版)」を読んだ
昨今の世相を見るに、非常事態が重なると、満足な医療が受けられない可能性は非常に高いと思う。我が国の医療がどうのという話ではなく、社会はそういうバランスで成り立っているという程度の個人的な認識だ。コロナウイルス騒ぎが2020年には収まらないのではないか、という情報があるなかで、スマホが地震速報のアラートを響かせるとあればより一層心配になるというもの。実際、コロナ抜きでも首都圏の大地震一発でそうなってしまう可能性は高いとおもう。「そうなる」というのは、負傷者や元負傷者がそこいらの道端やがれきの下に転がっているような状況だ。本書のような内容に興味がわくのは至極当然なのであります。
本書は戦闘外傷救護とある通り、戦場での救護に重きを置いた内容だ。兵士がどのように戦場で救護を行うのか、という視点といえる。自分が兵士のような実践的な訓練を受けることもないので、まさか本書を読んだだけで人が救えるとも思えない。でも、一縷の望みをつなぐことが、出来るかもしれない。
本書は戦場での対応が主であるから、「銃弾による外傷は(兵士の)着衣の上からは視認が難しい」という我々には縁がないように思われる事例も書かれている。ヘーヘー。また、兵士が持っている軍用の装備の使い方も写真付きで詳しく解説されている。「銃を構えて敵を警戒したまま、膝で体重をかけて止血する」銃を持つことはあり得ないと願いたいところだが、銃じゃないもので両手が塞がることはいくらでもありそうだ。
ここで正直に言うと、kindle無料枠だったこともあり、そこまで細かく内容を読み込まなかった。(どうやら無料期間が終わったらしく、1700円ぐらいの価格がついている)ぼんやりとお布団の中で読み進めた程度。上記の他にへえと思ったのは、軍用犬のK-9という呼び方が犬の学名からきていること。直接圧迫で止血するときは、傷口にぐりっとガーゼを突っこむようにして圧迫すること。傷口を全体的に圧迫するだけでは不足らしい。とにかく止血は非常に重要であること。例えば太ももから大出血すると、3分で失血死する。胸部の出血より早く死ぬ。止血し始めた時間を書いておくことはその後の処置で有用であるらしいこと。心臓は左胸にはないので、心臓マッサージをするときは胸の真ん中、上から体重かける。斜めに体重かけると肋骨おれるよ。
また、メディックは最前線になんかいないという事が書いてあった。ゲームや映画では、負傷したら「メディーーーーック!!!」と叫ぶと何処からともなく駆け寄ってくるイメージだ。実際には最前線よりやや後方、ある程度安全が確保された領域にいるらしい。最前線では自分たちで処置をして、後方のメディックに送るらしい。
「一縷の望みをつなぐことが」なんて書いたけど、難しいとおもう。東京で地震が起こって、そこらじゅうが阪神大震災で一番被害があったエリアのような状況になったら、戦場より状況はひどいんじゃないかと思う。訓練を積んだチームワークなどは存在しないからだ。救助も期待できるか?本書はきわめて実用的な知識を得る書籍ではありますが、逆になんか絶望的な気持ちにもなった。怪我をしてもなんとか助かるだろう、なんていうのは幻想なのかもしれません。
まあそれでも。自分が無能でも周りに有能な人がいるかもしれないし、自分が死んでも物品があれば他に助かる人がいるかもしれない。備えをすることはやはり有用だと思います。兵士が携行するようなものまで揃えようなんてキリがないけど、「清潔な布」ぐらいでも役に立つのかもね。世界は戦場であり人生は兵役であります。祖国とは我々一人一人の血であり魂であり稼いだ金であります。豊かさとは壁の厚みであり安心とは備蓄の量。セーブポイントを自力で作れる人が勝ち組。
なるほどつまり。
イシャはどこだ!
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「美術館を手玉にとった男」を観た
いつものようにAmazonプライムにて。原題は”Art and Craft”。邦題による印象のゆがみを観測できる。事件のあらましを知っている人からすれば、このタイトルはちょっと違うんじゃないの?と思うかもしれない。映画を観終わった自分も、おなじ感想でありんすが、日本のマーケット向けの戦略がございましょう。
ともあれ、内容は良かった。
美術館に偽物を売りつけて金をせしめたというような話ではない。彼は作ったものを無料で寄贈している。もちろん、自分が作ったとは明かさない。作中のやりとりでは、事実ではないストーリーを用いて入手経路やらを美術館の担当者に語る。そのようなストーリーを使ってまで、自分が作ったものを美術館に寄贈する動機とは一体なんだろうか。実に興味をそそるところだが、本作を見ていただければ。
彼の制作作業の一部も作中で垣間見れる。贋作と気づかれず、事件が明らかになった後に個展まで開かれるほどのクオリティである筈なのに、素人目にはがさつな日曜大工のようである。彼によって生み出される絵画が”本物”の出来栄えであったので、美術館はすっかり”手玉に取られた”ということ。さらに、彼は”特別”である点もストーリーに彩りを持たせていると思う。「美術館に贋作送りつけてみた」などと、そこらの輩がやるような軽薄な動機ではないのだ。
びみょ~~に持ち上げてみたのだが、物語はあくまで彼個人のものだ。彼に害意はないかもしれないが、贋作を作って寄贈する計画性があり、継続の意思もあった。刑事罰は受けなかったようだが、モラルに反するのでは?という主張が当然なされる。彼の”善意”と社会のモラル。原題のニュアンスはこの構図かな。絵を描くにあたって求められる倫理とは?博物館に展示されるに及んでの倫理とは?
その間にキャンバス一枚挟み込んでしまった男の話。絵になるんですわ。
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「1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365」を読んだ
タイトルから漂ってくる駄作の空気。
原題は「The Intellectual Devotional」とあり、同名のタイトルで何冊があるようで、それぞれテーマが異なるシリーズものといったところか…。そのまま訳すと「知的な祈り」とか言われるが、たぶん知的なもの、知的であることに対して献身的であるとか信心深いとかそんなニュアンス?これはたまにある、「邦題でやりやがった」パターンか。と思ったけど、実際読み進めるとこれは本書の内容を実に忠実に表現しているタイトルだと思う。実際のところまったく1ページには収まっていないが、一日一個賢くなりましょって感じ。まあ、電子書籍で読んだのでページ数なんて気にしないし、原典に1ページなんて書いてないもんな。
タイトル通りに項目が365項目あり、それぞれについてwikipediaみたいな蘊蓄と概要が書かれている。じゃあwikipediaでいいじゃんというツッコミがまさにどんぴしゃりん。それでも世界史の授業を振り返るような楽しさもあるには、ある。どういう基準で365項目というものをチョイスしたのだろうか、謎が残るところではあるが。読み進めてみると、著者の好みによるものなんだろうか、ネタが集まらず穴埋めしたんだろうか、「アメリカの作家」とか「イスラム教」関連が比較的細かい。曜日ごとにテーマ決め打ちしちゃっているから、ネタを薄める必要でもあったんだろうか。とはいえ、ブラックホールだとかオペラの楽曲だとか、内容が多岐にわたっていて読み物として確かに飽きが来ない。飽きるほど細かく書いてないともいえるか。「あゝこれは知っているぞ(ドヤァ)」という感想を抱く項目があることも、本書の一つの狙いなんだとうか。読んだ時の満足感という意味ではね。
自分は「哲学」カテゴリはほぼ全部読み飛ばしたけど、それなりにそれなりの面白さがあった。本書を読むと改めてインターネットがもたらしたものを大きさをかみしめる。本書のお値段3000円となっているけど、Amazonプライムは無料で読めるし、またググって出てくるもののコピペだけでも本書以上に充実したものが作れそうだ。そういう意味ではAmazonプライム以外で読む人いないんじゃない?という一冊でもある。記憶に残っている内容は「ユリシーズ」という書籍について、「そういえば読んだことないなあ」と思ったのと、ドストエフスキーが絶賛されていた…と思う。
おもいだせねーわググるかー。
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「モリのアサガオ」を読んだ
2004年~数年の連載だった作品。刑務官の主人公の物語。死刑とは、というテーマに沿っているわけだけど、どうしても、あの事件を思い起こしてググってしまう。
「司法に絶望した、加害者を社会に早く出してもらいたい、そうすれば私が殺す」
この言葉ばかり取り上げられるけど、本件は本村さんの上司の発言が凄いんだ。…とはいえ本作品とは直接関係ないので、以下いつもの読書感想文。
特徴的な絵柄でびっくりするんだけど、そこは漫画のマジックでそのうち慣れる。人類はアカギだって普通に読めるんだから大丈夫だ。ストーリーは漫画上都合よく、ドラマ仕立てに進みすぎる印象もあるけど、無駄がなく内容が伝わりやすくて良い。文字が多いのはしゃーない。でも、リアリティに縛られてないとか言えば良いんだろうか、そこが良いところだと思う。例えば「そんな風に筆談した内容掲げるわけあるかーーーい!」ってツッコミどころもある。あれはクイズ番組の回答じゃねえかw
友情が芽生えた!恋人との別れ!みたいな展開もあって、あーこりゃテレビドラマ化しやすそうだなーなんて思っていたらすでにされていた。
死刑の是非、みたいなもん、そうやすやすと結論が出るわけもない。制度の出来の良さに議論を持っていくと、さらにこじれる。どうせ完璧なものは出来ないから、failしたときの策を講じるのが人類の知恵だろうと。死刑の対策ってなんだ?とりあえず生かしておくが解決策だなんて言えるか?
あっ!犯罪が無くなればいいんだ!天才か!ってマイノリティレポートの世界に夢を託すには遠すぎない?あれってテクノロジーの話ではなくて、超能力者の予言だよ?エスエフだっての。
命の処遇にベストエフォート型でいいのか、という疑問に、しょうがないだろうと結論して良いのか。医療行為だって飛行機運用だってベストエフォート型の命の処遇にも見えるけど…対象に強制力が伴うあたりが違いかあ。
死んだ人間が簡単に生き返るようになれば、死刑で間違って処しても、メンゴメンゴって生き返ればいいか。…?それだったら例えば殺害された被害者のほうも「いってーなゴルァ!!」なんて言いながら生き返るから罪の重さの概念が変わるかな。
あっ!死ななければいいのか!天才か!
これが「間違いを犯さない」「罪を犯さない」よりは現実味があるというのは、わたくしの穿った考えでしょうか。