どくしょかんそうぶん

「あたえられるか否か 徳川埋蔵金120年目の挑戦」を観た

徳川埋蔵金!とくがわまいぞうきん!

自分と同世代の人には、とても懐かしい響きの言葉ではないだろうか。細かいことを知りたいかたはwikipediaにでもお問い合わせいただければよいのですが、当時はTVでその発掘作業の特番が組まれたりして、とても人気だったのですよ。糸井重里が音頭を取って(?)数回番組が放送されたようだ。その何度かを、子供のころに見た。当時も、そしてこれまでもずっと埋蔵金は何も出ていない。糸井重里だもの勝手に掘りつくしてお宝も回収してから番組をやっていた、なんてありえる。おいしい生活。

本作はその、徳川埋蔵金発掘にかけるある人物を追ったドキュメンタリーである。糸井重里が徳川家が江戸幕府の終焉に際し、赤城山に隠したとされる埋蔵金は現在の価値で数百だの数千億円だの兆だの!言われており、否が応でも盛り上がるというものではある…。述べた通り、結果として、いまだ発掘されてはいない。これはネタバレとは呼びませんからね?

「徳川家の隠し財産」と言ってしまうと単なるお金持ちの、例えば今でいうなら孫正義とかcisの隠し財産みたいなニュアンスも漂ってくるが、言い伝えによれば当時の国家の運営資金である。その規模もガチであろうし、なんとか守るための工夫もまた桁違いと想像する。そしてその財産とは(実際に出てきてはいないけれども)具体的には大判小判であるとされる。物質で言えば金、カネじゃなくてゴールド。総じて質量も相当のものだろう。この金が実際に存在し、隠す計画を実行に移したとしても…どうだろう、可能だったろうか。江戸城から赤城山中まで、隠匿しきれるものだろうか。例えば関わった工夫を皆殺しにする、なんてことを実際にやったのかしら。守るための工夫。簡単に見つかるようにはなっていないだろうということ…うーん。さてさて。

このドキュメンタリの主人公となる水野氏は徳川埋蔵金の発掘作業に携わり続けること、実に三代目にして120年目ということである。祖父が手にしたという資料から引き出される門外不出の情報を元に、穴を掘って埋蔵金を探している…ということなんだが、お年のせいもあろうか「一攫千金でおいしい生活!」みたいな欲にギラギラした感じはなく、物静かでどこか怪しい雰囲気満載の老人である。なお、前述の糸井重里版の番組にもゲストとして登場している。というのも、氏は赤城山一帯の地主でもある。発掘のために先代だか先々代がごそっと買ったらしい。へえ…。一族の使命ということだなあ。

作品のバックグラウンドばかり書いている気がするが、実際作品の中身はどうか。映像はなんとも質素だ。一昔前の小規模企業のPRビデオのような、制作年度のわりにはやや安っぽい印象を受ける画質。例えば実家に帰ってこたつに入り、祖父とのお喋りを撮っているような、ぼんやりとまばゆい雰囲気。数兆円とも言われる埋蔵金を探しているような現場感には乏しい。一応作中に穴掘りの場面もあり、金属探知機で探っていく場面もあるにはあるが、120年に及ぶ発掘にかける哲学のようなものが本作品のキモとなっている。ひとときのテレビのブームも去って、それでもたまに訪ねてくるんであろう「埋蔵金の謎を解きました!」という訪問客を迎え、一応は話を聞いて現場に共に赴く。ふんふん、へえ、ほおと生返事をしているが、後でカメラの前では「あんなの出ませんよ…」とばっさり切り捨てる。

印象深い場面はいくつかあった。とりわけ、実際に埋蔵金が出てきた場合について言及しているのが面白い。もし発掘されたとなっても、国は時間を稼いで諸々立法して自分にはまるごと渡さないようにするだろうというのだ。言われてみれば、実に現実的で冷静な見当だろう。wikipediaにもこういう観点の議論が書いているが、確かに出てきたものがひょいっと簡単に自分のお財布に入りそうにはない。ここからすこーし妄想する。そもそもが、「特定の地域では地面を掘って遺跡っぽいもんが出てきたら、工事を停止して届けなきゃだめよ♪」という規定も、日本のどこかにあるかもしれない徳川埋蔵金対策で作ったとしたら面白くはないかな。ありえない?どうかなあ。現代の埋蔵金、仮想通貨もブーム直前にずいぶんせかせかと法体系を固めたと噂されておりますよ?こっちもブーム終わってしまったが。

さて、本作品に登場する水野氏は実は2011年に亡くなっている。ググってみると、それ以降2,3回ほど徳川埋蔵金関係の番組がテレビで放送されたようだけど…ご存知の通り発掘されてない。その放映内容は全く知らないけど…例えば巻物を読み解く、みたいな事しなくても探せるんじゃないのかって思った。今どきの科学力で、大量の金が埋まっているのであれば何か検知できるものじゃないの?火星や木製の成分?までわかるゆーてるじゃないですか。そこいらの土ンなかぐらいわかりそうな。

探索手段はともかく、現物をその手にしないことにははじまらない。土の中にあるというなら、掘らねば。今も地面を掘っている人はいるんだろうか?自分としては、やはり何かしら出てほしい。例えば、小さい箱に小判数枚でも良い。何かが出た、という状況で人々がどう判断するのかが興味深い。「こんなもんだったのか」としょんぼりするのか、「これは次には凄いのが出るぞ!」と鼻息荒くするのか。竹やぶで現金拾った事件みたいに、どこからともなくスコップ持った人々が不法に侵入して大騒ぎにならんだろうか。下品な言い方かもしれないけど、今現在のこの国でどういう事が起こるのか、野次馬としゃれこみたい。時々アフリカあたりからニュースが流れてくるじゃないですか。タンクローリーや列車の事故現場から物資を盗もうと殺到する人々。日本のみなさまの欲とモラルは如何でございましょう。

なお、エンディングのスタッフロールでBGMのクレジットが流れてきた点に驚いた。ええ、オリジナルなのかーい!


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