「砂の器」を観た
えっ。あれ森田健作なんだ。一応ネタバレあります。
1974年の映画のデジタルリマスターというやつ。amazonさんにて視聴。原作は本格的推理小説らしいが、本作はむしろ人情ものとでも言ったらいいのか。俳優をやっている丹波さんはあまり見たことがないので新鮮。自分には大霊界おじさんというイメージがありますねえ。(敢えてマニアックに言えば、ブリーフ4というお笑いのバカ騒ぎ企画で丹波邸に突入するという物があって、あまりにアレな伝説級の出来事だったのでその時の丹波さんの印象が強い。見たい人は各動画サイトなど)この映画発表年は1974年。自分生まれてません。昭和で言うと49年ぐらい?作中に存命の人物として登場するひとびとのプロフィールが、普通に大正うまれとかそういう時代。
技術の介入により画質はとても綺麗だけど、作中にでてくる役所にもパソコンなどあるわけもなく、みんなそこらじゅうでタバコ吸うし。街並みも車も古い!車に詳しくない自分でも知ってる、ミラーが車のフロント近くについてるのが昭和の車。ドアの部分についてるのが平成以降の車。情報集めも、今なら座ったままパソコンで調べてわかりそうなことを、二泊して現地にいって調査したりしている。刑事が訪れるのは如何にもな日本の田舎。田園風景は自分の故郷の景色に重なってそこが一番涙腺が緩んでしまった。
クライマックスを演奏シーンに重ねたのは格好いい演出だなあと思いつつも、ちょっと指揮の動きがぎこちないかなと。全体的に、一つ一つの出来事を、つぶさに描画を重ねていった作品で、作中の刑事たちの行動もしらみつぶしに探し求めて…まあその、隙がない。推理というかミステリーというか、原作がこういう物なんだろうと思うけど(読んでません)、それをとても丁寧に作り込んでいるんだろうなあという印象を受ける。そら二時間も超えますね。
全体的に、自分のギリギリ体感している昭和の感じが色濃い。先に挙げた車もそうだけど、首振り扇風機だとか、どこでもタバコを吸う人々だとか、みんな白いシャツをきて汗ばんでいる夏の日…。物語が進むにつれ、ねっとりと、人生の重みがねっとりと…。何か奇怪なことが起こったわけでもない、一件の殺人事件から明らかになる一人とそれに関連する人々の人生の重み。これは堪能いたしました。
「砂の器」ってどういう意味なんだろう。映画の中では、まさに「砂」で「器」らしきものをこさえる場面が出てくる。1分ほどしかない。水を注いでいかようにも作り上げることができるが、乾けば脆く崩れて風に吹かれてしまう。人生とはそんなものですよ、的な。
名作で御座いました。