「天国と地獄」を観た
ネタバレです。ネタバレです。
黒澤明シリーズが続いておりますが。
この作品のamazonのレビューにも同じような指摘があったのだが、境遇の格差からの逆恨み?で誘拐を企てたのだが、今の(自分の)価値観で見てしまうとそんな恨むほどかね、なんて思ってしまう…。犯行動機がピンと来ないというか。作中では端的に住居という環境の差がその犯人の主張する恨むべくところの一つであるが、どうしても、え、それだけ?という思いがある。もっとこう、目に見える所ではなくて、なにかこう個人的な怨恨とか、過去にあれこれとか、人物に対する恨みとかないのかと。こういうところがさらう子供を間違えた、というところに繋がるのかもしれない。
なれば現代は、生活の格差などというものはもう人を恨む理由にはならんのだろうか。いやいやそんなことはない…。されば現代人は恨みを抱えどもその行使に及ばぬ、高貴な徳に満ちたか、いやいやまさか…。ではなんだろうね、この、「金持ちの子供をさらう」行為に対するどこか白けた感じ。この映画から模倣犯が出て刑法の改正に繋がったと言われるぐらいで、相当なインパクトが当時はあったようなのだ。
難癖めいてレビュー始まったけども、じっさい犯人捜索のストーリーは実に面白い。子供を取り戻してこの映画は終わりだろうなんて思っていたら、むしろ取り戻してからが面白かった。捜査に従事した刑事たちが会議室で進捗を報告し合う場面。例えばダンディー鷹山セクシー大下のテレビドラマで同じ場面をやっても画面も展開も似たようにものになるんだろう(というかこのシーンがテンプレになっているのかも)それでもただなんか、画面に映るすべてが昭和だというだけで新鮮。しかしこの、画面から伝わる暑苦しさ。撮影は冬だって書いてあったけどほんとかよ。
いや本作も面白かったですねえ。
撮影地どこだろうかと調べたら、すぐに非常に良く調べてあるサイトを発見したのでリンク。こういうコアな趣味世界に没頭しきれない自分には実に羨ましくもある。昭和38年というのはもう昔話。自分の父が作中の子供ぐらいの歳…。自分ももう40になりますしね…。