白い夜
部屋を出た瞬間に冷や汗。そして強烈な寒気で汗も凍るかと思われた。
先日、珍しく深夜出勤。某施設で朝までお仕事って按配。頃合かなと部屋を出ると、しんしんと牡丹雪のつもり行くさま、いとどあはれなり。当然のことながら、ルート検索で程よい時間ってのは電車遅れたらアウトの時間であるわけで。長丁場なのにこんなとこで体力つかいたくねえなあ、などと思いつつも、歩みを早める以外に無い私。傘を擦る雪の音と、足元で踏み固められていく雪の音は、少々懐かしい感じだが、楽しんでる暇などございません。タクシーも考えたけど、ずらりと並ぶ車列に絶望感すら覚える。駅のホームに電車が止まっているのが見える。運行しててくれよお~。
中央特快万歳。新宿まで予定を十分近く上回るペースで進んでいる。乗り換えた路線が止まってなければ遅刻はないなーと、空模様をうかがうに、軽く小雨がぱらつく程度。ここでようやく緊張が緩む。ふえふえ。ほぼ時刻どおりに到着。控え室はごった返しており、着替えるのに一苦労。徐々に同僚も集まりつつもみんななんとなく不安。大掛かりな作業の割には、部分部分で準備が間に合ってなさそうな印象を受ける。情報の浸透もイマイチ。換気はもっとイマイチで、動いても無いに汗だく。長丁場なのにこんなとこで体力つかいたくねえなあ(2)
今回のお仕事の構成上、事前に完全な情報が流れてくることはないとはわかっているけど、伏せなくてもいいような情報まで伏せられると、たとえ当日書面で受け取ったとしても、やや狼狽するもんだ。少人数のチームで広い建物の敷地内部に散って作業をするわけだけど、深夜の某施設で大声も出せないし、セキュリティ上自由に移動もできないし、フロアが分かれると連絡もままならない。電話は非推奨。さすがに全く使うなとは通達はなかったけど、(あたりめーだ)場所によっては電話は全く通じない。作業を進めながらも判明する事実があるのが常だけど、これが本部まで届いて他のチームまで届くのにどれだけ手間かかるのだろう。まあいいややっちゃえ~は絶対にNGなので(あたりめーだ)作業は滞る。場所によってはサクサク、場所によってはもったりギトギト。チーム内部でも作業の進捗に差が出る按配。チームって、当日の即席ですから、気の効いたコンビネーションもなかなか。とはいえ一晩働けばそれなりになるもんですけどね~。
ネガティブなことばかり思い出されるな。常に薄暗い中にいて、暖房が効いていて暑く、ひそひそ声で話し、ディスプレイを見つめ、ナースのひそひそトークにしっかりききみみを立てつつ、脈を数えるピコピコ音がこの上なく空気を圧迫するるるるるる。なによりサイズのきつめの作業服が一番の圧迫だっつーの。まあ俺のせいか、これは。ナースや意思は半そでで過ごしてる横でこれはあまりにもあれっちゃあアレですがな。外の空気を吸わせろ。外のほうが汚れていることなど承知だが、広い空気を吸わせろおおおるるるる。
さて。一通りスケジュールをこなすと、徹夜作業だというのに二時間ほど待ち。まあこれも覚悟してたけど。食事へ。わりあいみんな元気に振舞う。振舞うだけだっつの。
作業再開前にまたひと悶着。チーム再編成。ほぼ初対面のひとと二人組み。作業場所も違うのでわたふた。あのなー、自分には図面はないのよ。電話番号しらねーし。電話番号押さえておくには絶好の機会なのだがそんなことに気を回す余裕がなくなっていく状況へ。担当箇所に作業の統括本部があった。
こちらとしてはまだチェック業務があるんだけど、そんなの夜があけたこの時間になって先方もそんな悠長ではない。チェック中の自分からマウス、キーボードを奪うようにしてなにか業務用のアプリを確認している。そうなるとこっちもそれは聞いてないなあーってことになってしまうわけで、どうすんのか・・・。チャンネルを取り合う兄弟のようにせかせかとPCの前に付き、離れるをする自分と見知らぬ技術者たち。マスゲームかっつうの・・・。そんなことをやっていると、当日の昼の部の部隊が到着し始めてここはベトナムの野戦病院かってえ按配に。ここらで自分たちのグループは各チームに散っていたんだけど撤収指示の時間に。ベースキャンプに戻ると、すでに退出準備万端の同僚たち。おいおい<、などと思っていたが、時計を見たら凍りつくような時間。まにあわねえええええ。
外はすっかり快晴。疲れたけどそれを自覚する暇もなかったわ。作業が忙しかったというよりは、気を抜けるタイミングがなかったなあ。しかして本日夕刻、白いシーツに上着のまま寝ていたことに気づいてしばし、これが日常の人々もいるのだなあと、髪も白くなる心地、われらの世界はいとあさまし、飲み忘れた缶コーヒーでちと目覚まし。