• どくしょかんそうぶん

    「ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス」を読んだ。

    これは傑作。すぐ買おう→amazon

    「事実は小説より奇なり」などと申しますが、読み終えた爽快感はなんといえばいいか。感動系の映画のような、ひいきのチームのスポーツ観戦のような、入れ込んだゲームで強いボスを倒したときのような!!!!うおおおおお!!

    本書に興味を持った方の多くは、インターネットに染み出たその珍奇とすら言える管理組合のルールを目にしたのだと思う。詳細は本書を読んでねって話ですが、北朝鮮と揶揄されるに相応しい酷さという印象を受けた。ただ、管理組合いうても民間人だし同じ建物の住人だし、本当の北朝鮮みたいに銃を突きつけられるわけあるまい。そう思っていたんだけど、住まいに関する権限を握られるというのは過酷な話。騒動が大きくなるきっかけには管理費の大幅な増額があったようだ。住民からすれば当然なんでやねんって話にはなるけど、その疑問に誠実な対応がなければ揉めるに決まっている。こういう、総会が開催されるような大規模マンションに住んだことは無いけど、どこでもこんな住民による組合の管理体制で揉めたりするんだろうか。

    問題となった管理組合の理事長は一体なんだったんだろう。本書では馬鹿正直すぎて融通も効かねえという知人の評があった。私が本書を読んで受けた印象も、まさにパラノイアっぽいというか、どこぞのヨットスクールや大ベテランの将棋棋士を連想させる。スラング的に言うなら思想が強い。さらに言えば、なんだかんだありながらこういう立場の首を民主的に変えることができる政治の仕組みというのは、まだ健全健全健全健全健全健全健全なんだなと思えた。

    不健全な管理組織と対峙する主人公相当のチームの健闘っぷりが心に刺さる。熱い。人生とは、こうして不条理と戦っていく事が必要なんだと!!友情努力勝利。

    なお。そんなどくさい管理体制により、マンション内に侵入する不審者などの心配が無かったという話と、建物自体の保存状態が良かったという話も付記されていた。ただ、後者については前述のように管理組合が計上した費用が不当に高いなどの疑惑もあったし、管理状態良好な物件なんぞ他にもあるだろうと思う。また前者についても、野次馬の立場で言ってしまえば管理組合自体が不審という印象を覚えた。そもそも、どちらも住民と揉めるような事が無くとも実践可能ではある。それでも何か決まり事を有耶無耶にするようでは成り立たないことも容易に想像がつく。まさに政治、まさに自治、まさにResidenceですなあ。本書を読書感想文の課題図書にでもしてみたらどうか。

    ところで、住民側がDQNすぎるエピソードも山ほどあるだろう。そっち側(?)視点で作られたものにもどこかにはあるんじゃないかね、目を通してみたいもんだ。悪徳住人を成敗したような話も読んでみたいじゃないですか。