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この鳥や
今年は29日まであるのね、などとスマホのカレンダーを見ながら寝入った、そんな翌朝。耳になじみのある鳥の鳴き声がした。ぼーぼー。っぼっぼー。故郷の朝に聞いたことがある筈だ。あまり冬に聞いたイメージはなかった。夏の朝、まだ涼しい時間に裏のたんぼのほうから聞こえてくる、そういうイメージだった。青空と緑。ああ美しいときたもんだ。さて、鳴き声しかわからない鳥の種類をどうやって調べたものか。インターネットならまあできるだろうとやってみると全く以て簡単にわかってしまった。
鳩。そこらで良く見る、あの鳩らしい。キジバトというのか。関連した情報を見たり聞いたりしているうちに、やはり夏に鳴くものらしいと分かったが、まあ冬眠する生き物でもないし冬に鳴くこともあんだろ。鳴き声がすればその姿を見てみたい、と思ったんだが、そこらを歩いている鳩と知れてしまうと興味も薄れてしまいました。
つげ義春の短編だと思うんだけど、鳥のような姿をした男を何度か見かけた人が、飛べ!飛ぶんだ!と言った作品。話の筋を覚えてないのでここだけ書いても意味がわからないけど、その場面でどうにも涙が止まらなかったのを思い出した。
そういえば東京ではカラスは本当に減った気がするね。
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夜の巷を舐りて明かす
夜の公園が好きと言うか何と言うか――。
つうても半端な夜ではない。例えば金曜日。終電から吐き出された人々ももう通り過ぎたような時刻の、午前一時半あたりの公園が好きだ。都会の公園、真っ暗な視界のどこかしらには幽かな人の気配を感じつづける。木立の向こうはいつでも車が走り抜ける通りがあって、車が通り過ぎると鮮やかに発行するライトが目を惹く。心許ない照明の足下に気配の正体がやってきては、通り過ぎていく…。その多くは当然ながら成人男性か、それを含む二人連れだ。やがて朝を迎えるに至り、疲れを覚え、帰ってただ寝る。
一番気配が鎮まる時刻はやはり午前三時ぐらいだろうか。この公園の場所だと、終電から二時間、始末までも二時間。夜の底。暗いことには暗いのだが、何かが通れば気付く。車の通りも流石にまばらになり、近づいては遠くなる幽かな走行音が、一台一台を判別できる頻度になる。暗がりに心許した体で、じっくりと眺めていると心が穏やかになっていく。湯船に疲れるまで浸り、やがてリラックスに至るようなものだ。天然の暗がりのかけ流し。星屑が銀河からぽたりと背中に~♪
いくらトーキョージャパンでの事とはいえ暗がりに一人というのは用心にこしたこたあない。家無き人々に紛れて逃走中の凶悪な輩がいないとも限らない。だから酒は飲まないようにしているし、靴を脱いでベンチに胡坐、ということだってしない。常に鍵は落としてないか気にしながらの移動、財布は小銭入れしか持ってこない。ここは昔バラバラになった人体が発見された。今んところ霊もあの世も弥勒菩薩の救済も信じてはないが、世の中には無念の内に亡くなった方々がおり、哀悼の意を捧げることが詮方ないとも言い切れない思いがある。
暗がりは人を素直にする。煙たい説教も不謹慎な炎上も聞き入れることができそうな、心の用意ができる。目を閉じるなどとは根本的に違う。
その……なんのかんの、まあ時間があったのが自分の20代前半でした、というわけで。最近では例にもれずにスマホ持ち歩いているから、ゲームでも”読書”でもバッテリーの切れるまで堪能できる。となると家でも公園でも一緒と思う所、やはりそういう雰囲気のあるところにいるというのは全然違う物なんである。プロのミュージシャンが録音するスタジオにこだわるようなもんだ。何を言うか。
流石に朝まで夜明かしするなんて年に一回もないが、20代の頃よりももっと「困ったなあ」というような状況には頻繁に遭遇している筈で。ところがまあ困ったまま夜更かししてあとは寝れば良い、というわけにもいかなくなったのですよこちとら。お年を召した。
朝が来る。世界に色香が。
最近、どうにも景色が美しく見える。何を見ても印象深いなあ、という感覚になることが多い。心に沁みると言うか何と言うか――。あの若いころの、人気の少ない真っ暗な夜の公園で感じていた心象が、休日午前の人賑わう駅前でスマホ持ってうろうろ歩きながらでもやってくる。これは危ういものか楽しいものか。実際、歩きながら通り過ぎる人の様子などを眺めてしまう。昔からこうだっただろうか?最近は自覚がある。あまり褒められた行動ではないので慎むべきもんで。カモフラージュ的な意味も兼ねてデジカメでもぶら下げて趣味とするか?一番欲しかった時期に結局買わなかったしな。お散歩の楽しみが増える。
昼の巷を舐りて暮れる。
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豆腐のパックで氷を作る
豆腐パックに水を張り、冷凍庫へ。当然ながら氷になる。凍った後は重ねて置けるので、冷凍庫の中でかさばらない。使う時は包丁の背で叩いたり、パックの底を硬いところに叩き付けたりして割って使う。厚すぎるとなかなか割れないので、1cm未満ぐらいが水を張る目安かしら。
平たいままのほうが使い勝手が良い用途があればさらに便利かとも思うが、思いつかない。凍らせるときに傾けると傾斜がついた氷の台になるが、用途が思いつかない。冷やし中華の麺でものっけるとなんか高級感と清涼感でるかな。
で、これの何が良いかというと、自分の場合ちょうど一回使い切りの量になる。大きめのタンブラーに砕いた破片入れて、麦茶なりモヒートなり。なにより豆腐パックってのが分相応な生活感でお気に入りだし、叩き付けたりして砕くのも気合が入って良いわ。えいしゃおらー。
真冬に書くようなことでもないけど、ま、こんなところで。
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筒井康隆 「聖痕」
当然ながらネタバレ満載なので未読の方は…と言いたいところなんだが。以下、男性器官のことをちんこと表記しています。
小説と言われるカテゴリの読書は久しぶりだった。前に読んだ”小説”はなんだったろう…?
華氏451だった。三年も前だ。あまり面白くなかったと記憶しているが、上記の自分の文章の投げやりっぷりは一体どうしたことか。いつものことじゃねーかと思われた貴方はツウですね。一杯お付き合いを。葉月という店が良いでしょう。
主人公は幼少時にちんこを切り取られるという目に遭う。という事件が作中そんな重大な要素だったのかわからなかった。この件に関して、特にアクシデントが起こらず物語は終わる。もちろん何一つ起こらないというわけではないんだけども。作品のタイトルにするほど何かあったか?絵はサザエさんでもいけるような、どこかほのぼのした世界を感じてしまったのだが、はたして。
ちんこがない故に形成される性格、あるいは何か医学的根拠のある特質というものが実在するのかは知らないが、作中では声変わりしない、ヒゲが薄い、性欲がないといったあたりが具体的に書かれている。葉月の従業員室を知人のセクロス部屋としてあてがってしまうのは、そういう性格によるものだろうか?だからといって、それに関したアクシデントも特に起こらずに物語がすすんだ印象だ。平穏である。さも当然とばかり。磯野家だな。カツオは波平に歯向かわないし、マスオさんは酒場で酔客に滞空時間の非常に長いドロップキックをくらわしたりはしない。
知人達がご自慢のレストラン葉月で逢瀬をしててもへのかっぱ。これはではちんこの有無による人格云々ではなく単なる阿呆だと思うのだが。
最後の台詞も「ちんこがないからこれまで好き勝手出来ました」という意味にとれるだろうか。順調な人生の物語でした、という印象だけが残った。うーん。なんだこれ。氏の「旅のラゴス」という作品を確か読んだ事がある筈で、特に何も覚えてないけど良い雰囲気だったと記憶している。そういうなんとなしに心に引っかかる現象となるの、面白いもんだと思うのだけど、この作品は何とも感想文を書くのに困る。残らなかった。
あるいはどこかに記述トリックのようなものでも仕込まれていたのではないか、と勘繰ってしまう。読み直す気力も時間もねえわーい。
書くことに困ったから嘘でも書くか。主人公は異星人に襲われて失ったちんこを取り戻すため、銀河の彼方へ復讐の旅にでる。全世界待望の沈黙シリーズ最新作。沈黙の陰茎。May f#$k be with you.
わははははははは。面白くない。以上でーす。
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隣の家に囲いが出来たってね。
閉鎖されたその施設、数年に渡りそのままに放置されていたのだが、今年の頭n….去年の頭に取り壊しまっせというような立て看板が出来て、GWごろには日曜の朝かが地面がゆらゆらとするほど派手に工事をし、ドラ○もんに出てくるみたいな空き地になった。土管はない。
夏の青空に伸び放題の雑草を見ては、実にたくましいなあなどと眺めておりました。そのコの字型の空き地に、囲いばかりで肝心のハコが建たないなと思っておったら、汗にまみれて担当者が説明文章を持ってきた。近隣住民に向けてこういう説明会など催しているようだから、それなりにきっちりした通知義務が施工業者にあるものなのだろうと思っていたが、思ったより充実のないようだったので読みふけってしまった、という話です。
先ずは大まかな建設のスケジュール表。業者の担当者の連絡先とか、たぶん法律上決められたデータの表示。敷地の面積とか?そういうの。んで、出来上がるものは何かという説明。外観図。できあがるのは普通のマンションのようだ。家賃が同じなら絶対引っ越すがそこらの情報はない。当たり前だ阿呆。
電波障害の予想図。これ凄いな。アパートが出来るとどういった影響があるのかという図表なんだけど、そんなデータどこにあるんだ。そして日照の変化。冬至の日を基準にどういった建物の影ができるかという図。へえ。これ面白いなー。来年の冬至には計画を見る限り工事は終わっている。前後の休日に晴れればこの図面と見比べたい。具体的な方法は本年度の課題だ。
このドキュメント、年末のゴミから貴重品の封筒に昇格し、一年の眠りとなりました由。
ちゃんとダジャレは書いたから探せ。