どくしょかんそうぶん

  • どくしょかんそうぶん

    「手紙は憶えている」を観た

    ネタバレです。

    こういうのサスペンスっていうのか?分りやすい筋立てで、最後にどんでん返しってやつ。どんでん返しは簡潔にサクッと見事に刺さる。ただ、映画のストーリーの根底にある物語は、我々日本人も”当事者”でありながら思う所は希薄である。国民性なのかね。もうそんなことは忘れてしまえ、というやつ…?そんな歴史的背景への理解がないと楽しめない作品というわけでもないけど、時折出てくるキーワードから連想されるものに具体性がないと、映画のストーリーを追っても???ってなるかもね。人物のモチベーションが想像できないと言いますか。

    そして、アメリカに銃が無くならないのは、映画に登場するアイテムとして便利だからなんじゃ、とすら思える簡単なエンディング。見せ場が終わったからにはさっさと〆ましょうという感じ、個人的には嫌いじゃない。何かお話に余韻があるわけでもねえしな。

    ところでこの筋立ては、少し前に見た作品、「Memento」に似ている。日常的な記憶を失ってしまう人物が、何かを頼りに毎回記憶を取り戻していく。そろそろ、これらと同じ役割をスマホで果たす映画を…っていまさら作っても、もう新鮮味ないんだろうなあ、おそらく。

    なんか簡素で薄い感想文だけど、その最後のどんでん返しがきっちり決まっているので、まあまあ面白かったです。

  • どくしょかんそうぶん

    「夢」を観た

    一応ネタバレですよ。

    世界のクロサワ的な映像作品ですが、過去に見た記憶があります。どれかなーっとシークバーを探っていくと、2番目のエピソードで御座いました。その他のエピソードは初見の筈でしたが、映画の作風的にもじっくり見入るようなもんとも思われず、ぼんやーーりと観ておりました。見せ場はまた祭りということで良いのでしょうか。最後のエピソードは実にぐっとくるものでした。美しく映える映像で、自分は案外こういうの大好きなのかもしれねえ。

    ゴッホ役の人、マーティンスコセッシって書いてあってたまげた。ちょっと前に彼が撮った「沈黙」もamazonのプライムビデオにあったな。プライムは無料の対象外だったけど、GWに見ておけばよかったか。原作たる遠藤周作の小説は十年以上も前に読んだはずなんだが、流石に細かい中身は覚えていない。小説とかの場面場面を覚えていられる人ってどういう頭してるんだ。

    しかし不思議なことに、夢なら自分もえげつないものを見ている。いまだに覚えているものもある。そういうものを書き留めてネットに公開などをしておりましたが、すでに手元にもなく。結構グロい感じのものが多かった筈だ。狙ってそういうのを書いたもんだ。けけけ。黒澤の見たという夢はどこまでこの作品に近いのだろう。原子力発電所が~~なんて夢に見るのか。そこは流石にうさんくせえわww

    で、提供:スチーブン・スピルバーグ要素はどこ?絵の世界を人物が歩く、とかその辺の発想か?お面取ったらユダヤ人だったりすんのか(暴言)

  • どくしょかんそうぶん

    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」を観た

    心に静かに刺さった。

    しずしずと進む物語は、多くの人が人生で一度は経験しそうな面倒な事態。おっさんになった自分にはウッっと来るものが多かったです…。こういうものを淡々と捌ける人って本当に尊敬する。自分はキレて投げ出すが、前のめり過ぎて後味の悪い結果になるだけ。でも、淡々に見えて、その人の、その人なりの事情が裏にあって、それを乗り越えているわけで、乗り越えられなかった人もいるわけで…。

    ネタバレのないレビューを心がけると、こいう映画はもう書くことないですね。敢えて言うなら、土地の名前が何個か会話で出てきますけど、その位置関係というか地図上のイメージがないのでそこがのめり込めないところだった。結構物語のキーの一つではあるのだが。何よりまずこの映画のタイトルが実在の地名なので、興味をお持ちであれば事前にgoolemapで訪れてみても良いかもしれません。

    全編通してゆるやかに目頭を濡らしながら見ておりました。実に良作で御座いました。静かな休日にどうぞ。

    ……なお、ネタ的には、主役の人のwebサイトが10年停止しており、「イイ感じ」になっています。本人作とかなんでしょうか。

  • どくしょかんそうぶん

    「The Bank Job」を観た

    実話(を基にした)作品。

    今時も「貸金庫」ってサービスは存在するのでしょうか。手元に置けない貴重品を預けておくようなものですね。現金だってまるっきり預けているんだから、その他貴重品を預けたって自然な話です。ググるといっぱいサービスを提供している銀行はあった。考えてみればこれはネット銀行にはできないサービスだなって思うが、一方、銀行って形態での営業に付随する必要が全くないとも思う。値段も個人で利用するには安くはないと思うし、平日は夜19:00までとか利便性は低い。こりゃあだめだ、自分は使う気にならない。少なくとも家からそう遠くなくて、24時間いつでも使えないとそんなに大事なものを預けようという気にはならない。

    で。そういう貸金庫が強盗に襲われたのだけど強盗の手に渡った物品の中にはなんと…!という映画です。元ネタになった実際の事件に於いて、興味深いエピソードが一つ。窃盗の被害に遭ったものを特定する為に、警察が貸金庫のユーザーに内容物の情報提示を求めたところ、結構な人がそれを拒否したというのです。このエピソード自体は実話そのもの。一体ナニを預けていたのですか、英国紳士と英国貴婦人のみなさま。そして王室の…?^^

    映画の時代(元ネタの実話が1971年)より未来へ旅すること45年、富める者がその財産を守ることは簡単になったでしょうか、難しくなったでしょうか。この現代に、自分の”持ち物”に責任を負うことが出来ますか…。貴方が盗まれたと気付いた時には取り戻す手段もない。人生において自分が本当に守るべきものとは…。2018年のみなさま?^^

    映画自体はぼちぼち面白かったです。分りやすい陰謀に分りやすく対峙する。分りやすいピンチを分りやすく間一髪。個人的には実話のえげつなさに気圧されたままに見ましたが、可もなく不可もなく驚愕も退屈もなく。

  • どくしょかんそうぶん

    「Grizzly Man」を観た

    これはお勧め。具体的にネタバレしますが、10年以上も前のマイナーなドキュメンタリーだし良いよね?

    環境保護に入れ込んでしまった人たち、そんな中でよく見かけるのがスラングで言えばイタイ人。ああいう人たちは、熱心さを超えて狂気を帯びてくるようなこともある。捕鯨船に薬品バケツぶん投げたとかなかったっけ。そういう一人の男性のドキュメンタリー。彼が言う、政府は敵だ俺こそがクマを守り愛する者だとかいうくだりで完全にドン・キホーテ的な。滑稽に映ってしまう。遠慮なく言えば不快感を覚えた。この反応のほうが多数だと思う。だってこれじゃあ…。

    彼はいかにも話題になりそうな、皮肉の効いた事故で逝去する。さらりとその辺が語られると、まずはプロの方々の意見が実に適切に淡々と続く。単に”事故死”したというだけで、彼の行いが何もかも否定されるものではないだろう。全てが誤りだったとなるわけはない。それでも、彼の遺した映像から、徐々に聞くに堪えない狭窄した罵詈雑言とネガティブな感情が飛び出してくるにつれ、視聴者は彼を憐れむことが難しくなる。

    しかし一方、動物たちに猫なで声で挨拶したりする。この声色変えて様子を伺うのが、もはや気色悪い。自撮りの映像に残すために何か、いわゆる「録れ高」を積み重ねている、という事情を鑑みても、どこか病んでいるなあと映る。当然ながら動物に挨拶など伝わってはいない。とは言え、まじめに取り組んでいるだけに、気恥ずかしい。彼はあろうことか、自然に手を加え始める。熊の餌が足りないと言えば川の流れを作りサケを呼び込もうとする。雨が少なければ神を罵る。これらの行為には不快に思う人も多かろう。

    イライラを募らせながら、なんというか…人は分別を持つべきだと思えた。生き物とはわかり合えないし、神にもなれない。強くてかっこいいクマの友達になんてなれない。あんたはエサだ。彼の死後に識者から寄せられたコメントは如何にも、と納得できるものばかりだ。「彼は熊を毛皮の着ぐるみを着た人間として扱おうとした」「彼は人間と熊の、7000年間守られたテリトリーを踏み越えた」彼は自身に陶酔していたんだろう。

    世界を変えるのはこういうタイプだという事はできる。偉大な科学者のエピソードなど拝読すれば、気が触れていると思われるようなものもある。結果、何かを為し得て、それで許されというか。彼もそんなところにいようとした。ところが彼の遺した映像の全てがこのドキュメンタリーで出てくるわけではないが、少なくともこのドキュメンタリーで引用されいる部分には、彼が具体的になにを為し得て熊(と狐)を守ったというのか、一切出てこない。人間相手ならただのストーカーだ。愛してる。友達だ。俺が守る。みんな敵だ。これで愛したと言えるのは、動物は彼に不平を言わないからではないのか。これじゃあ相手はジュースの自販機でもいっしょじゃないか。

    例えば戦争映画や犯罪ドキュメントなどでは現れてこない、人間の魂に満ち満ちてはやがて穏やかに滴るダークサイドを、まざまざと見た心地になる。彼がああいうふうに死んだからこそ作品たり得る構成ではあるものの、良いドキュメントだ。しかし検死官の人眼力あるなー。彼だけ本職の俳優さんじゃないのか。