どくしょかんそうぶん

「おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密」を読んだ

教師と生徒という役回りで経済活動についてのあれこれを語りあう作品。表紙にはお金を増やす方法として簡単なクイズが出されている。ほとんどの人にとって、少し考えれば表紙の質問の回答はわかるかなと思う。作中の教師…つまりは著者のキャリアを反映して、経済活動は普通の中学生が意識するようなレベルではなく、もっと広い現実世界の話につながっていく。

本作は著者が自身の子供向けに書いたものがベースになっているらしい。日本の学校教育は実社会とつながりが深い部分に疎い、なんて思われていると思う。例えば、大学を出ても所得に応じた税金の納め方なんて知らない。自分で計算して額面申告するっていうの、知ってるのどのぐらいの割合だろう?日本国民の三大義務の一つについて、教育から放置されているのは不思議だ。教育だって三大義務の一つやないかーい。…という現場の状況を踏まえて、本書は親から子への教えを教育の現場に再構成したフィクションだ。納税は兎も角、経済について考えてみるというのは自分の中学生時代になかったこと。新鮮に思える。両親は必死に生活を支えるべく働いていること、経済の売店で三年生が店員やってた、ぐらいなもんか。こういうのは田舎と都市部で差があるのかもしれないが…。

で。

作品の舞台が学校というだけで、内容まで子供向けということもない。どストレートな結論の数々。例えば著名な「r>g」の話にも触れられている。著名な、って自分も本書で初めて知った。でも、感覚的に頷けるという事は、なんやかや、自分もおっさんになるこんにちまで現代社会で生きてきたという事。大人が読んでもそういうあたりが面白いかもしれない。ご家庭をお持ちの方であれば、子供とこういう話をするのも必要かもなー、なんて考えてみたりしてね。また一方、小難しくもないので、読み物としても良い。クッソ長くもない。

経済っていうのは、とてもとても複雑なものらしい。それでも、自分の暮らしで経済といっても「稼ぎ」と「支払い」の繰り替えしでしかない。即ちお金の増減。大人も子供も、もしかしたら企業もそこに違いはない。お金に着目して語るのって、美食の根本が素材の質にあるみたいな話で、一つの重要な柱たりえるだと思うんだよね。世の中はキャッシュレスに進んでいくけど、果たしてこのへんの認識が変わるだろうか。単位が「円」から「ポイント」に変わっただけで済むかな?ビットコインもコケたのかなんなのかわからないが、お金という単位で見れば少なくとも一度は世界的にコケた。本書ではお金を増やす方法の一つに、「盗む」を挙げている。コインチェックの事件では被害額は580億円といわれた。仮に一万円札だったら、6tトラックにぱんぱんに積み込む必要がある。

お金の過渡期、微妙な時期に発行された本書はその揺らぎで面白みが増す可能性もある。わずか数か月後にはどうなっておることか、自分はたまたま、面白い時期に手に取ったと思う。あまぞんさんでデータで買ったから、手には取ってないんだけど。

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