ふでのゆくまま

藤井聡太四段の連勝よりも

最初に話題になった頃、藤井君について書いたのは2015年です。今のうちから押さえておけば、将来活躍した時に鼻が高いなどと邪な事を書いていました。実際、現行の仕組みでは最年少でプロ棋士になり、デビューからの連勝記録を更新し、そのまま公式戦の連勝記録も更新しました。わーパチパチ。世間の盛り上がりは凄いのですが、どうでしょう、将棋ファンの間ではそこまで派手な盛り上がりもないと見受けました。

実際、一番の盛り上がりは、abemaTVによる非公式戦の「炎の七番勝負」なんてダサい伝統的な名前の企画の結果だったのではないかと推測します。プロ棋士の中でもかなりの強豪相手に6勝1敗で追えました。デビュー前からこれは本物だろうなんて噂されていましたが、この結果にはもはや一同唖然とするしかなく…。時を同じくして現役の名人がponanzaという将棋ソフトに手も足も出ずに敗れるという事態となり、将棋ファンも世間一般もこの上なく将棋業界に注目が集まったのです。

集まったままに連勝記録を更新し続け、結果としてそれまでの記録を一つ更新、29連勝を達成しました。しましたが、将棋業界ではそんな盛り上がってないのではないか?とは最初に書きました。理由はこんな感じです。まず、連勝自体はそんな重視される記録でもないからです。連勝した結果、なんかタイトルを取ったとか防衛したとか、そういうのがないとどうにも。藤井四段は記録更新しながら、かすりもしていないです。何故か。答えはボクシングと同じです。

デビュー前から歴史を塗り替える存在と言われようとも、なんの実績もないです。扱いはただの新人プロ。いろんなタイトル戦に、(プロとしての)予選の最初から登場します。となると、例えばシードされる人とかディフェンディングチャンピオンとかと比べると、対局数は多くなりやすい…これは理解できる。そして、そこで対戦する相手というのは、プロとしての実績に乏しい人が多いわけです…。そら、実力あったら勝ちまくりますよね。

例えに出したボクシングとかも同じで、最初からチャンピオンとやらせてもあるいは良い勝負になるほどの逸材でも、新人としてスタートします。そら勝つよね。連戦連勝のままにチャンピオンに挑むなんてちょくちょくある話なのではないでしょうか。

過去の連勝記録上位が、みんなそのキャリアの若いころに多いのはそういう理由です。記録に難癖付けているみたいでアレですが、実際そうだからしゃーない。例えば年度の最高勝率なんてものも、同じ理由で若いころに更新する人が負いです。このように徐々に下からのし上がっていく仕組みでありますから、本来、新人プロは現在のタイトルホルダーなどと対局する機会を得るまでも遠い。なのに、非公式戦とは言え対局してみたら上位プロをバッサリと斬り捨てた藤井四段。連勝記録なんかよりざわめくのはお分かりいただけるだろうか…。

ここで視点をもう一つ。新人は新人同士から始まるのであれば、上位はどうなるかと言うと、上位同士の対戦が多くなります。タイトル保持者になると、タイトル戦決勝まで出てきません。対戦相手は全プロ(とは限らないけど)の予選を勝ち抜いてきた猛者です。タイトルに挑戦することすら叶わずにキャリアを終えるプロも多い中で、長きにわたり複数のタイトルを持っている羽生善治三冠。対局相手の多くがそんな相手ばかりなのに、其の通算勝率は7割を超えています。やっぱ異常だわこの人。具体的な数字は以下のリンクで。

通算成績ランキング

藤井四段が超えるべきところはここ。連勝記録なんかどうでも良いと思えるほど遥かに遠いですなあ。

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