どくしょかんそうぶん

「今夜、すべてのバーで」を読んだ

いちおうネタバレ。中島らも氏の作品で、たいそう人気の作品だそうな。

本書で個人的事情により殊更強く印象に残った場面があった。主人公が外から酔って帰ってくると、医師に出くわす。医師は、主人公を霊安室に招く。そこで乱闘騒ぎに発展したり、いろいろ起こるのだけども…。この辺りで「嗚呼」と思い、kindleアプリを閉じてしまった。

読んだことあるじゃねえか。

本エントリの趣旨は以上で完了であります。拙ブログを検索しても言及はなかった、刊行は1991年ということなので、たぶん大学生の頃にでも読んだだろうか。

作品の中身についても少々。著者当人もアルコール依存症を患い、半ば自伝的な内容の作品でもあるのかと思う。作中、主人公からこのような愚痴がこぼされる。「街中のあらゆる場所で酒が売られている。メディア、街頭の宣伝でもひたすらに酒を飲めと勧めてくる」そんなもんで酒に走るのだ、とかそんな感じ。実に身勝手なものだと思う。依存症は病気だというが、それでも、”そうなる”まで飲んだのは、個人の意思だ。同じ量の情報を浴びても一滴も飲まない人、飲んでも適切である人、酒はやめましたといってきっぱり本当に止める人、なんぼでもいらっしゃる。その一方でお前はそんな適当なことを言っておるから、そんな体たらくになるのだ、と霊安室で殴りつけたいところだが、主張はある意味真実でもある。2021年現在でも、電車の中にまで広告あるもんね。

一撃アウトな薬物は禁止されているのに、同じ薬物でもある酒はOKな理由がある。文化的、経済政策的な側面での理由があるだろう。人間は何かしらに依存するもので、よく議論されたものではゲームだってそうだし、なんなら白米なんてものだって、無理やり依存だといえば依存かもしれない。そんなものを根絶させようとしても、世の中がさらに歪になる。自然災害に対するが如くに、ぼんやりとでも知識を備えて脱出ルートを想定しておくのが賢いんだろう。半ばあきらめつつ。

と、いうところに付け込んでくる輩もいるから困ったもんだね。

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