どくしょかんそうぶん

“沈黙”を観た

ウォッチリストに入れていたら、いつの間にかAmazonプライムの無料枠になっていたので慌てて拝見と。もちろん以下ネタバレ。

テーマとしては何をいまさら感のあるもの。「神は何も言わなくなった」なんて初期の大友克洋の漫画にも出てきた台詞じゃないかな。言わなくなって何年にもなる。これは1980年代かしらん。ニーチェという哲学者は「あいつ死んだんじゃね?www」などと言ったとか言わないとか。物語の舞台はキリスト教を禁じた時代の日本。とっても苦難の道でした~というお話。そういえばこの「沈黙」の原作である遠藤周作の小説は、ブックオフで買って読んだ事がある筈なんだが、何一つその記憶に結び付く場面がなかった。本当に読んだのかね。自分の記憶も何も言わないものでありました。

さて、現在、ここ、日本。

都市部では街中に教会を見かけることも珍しくはない。ご近所の景色を思い浮かべると…自分が日常的に徒歩で買い物でもする圏内に、二か所ほど教会の存在を確認できる。となれば、教会自体がそこまでレアだという訳でもない。それでも、”日本人で”クリスチャンという人には人生で二度ほど出会ったことがあるだけ。数は少ないよ。休日に教会の側を通りかかるとき、中で礼拝のようなことをしている様子を見かけたこともあるが、そこには西洋人の顔が必ずあった。映画の様になにか使命を帯びて日本に来ているのかもしれないし、単に日本に移住してきただけかもしれない。彼らのお仕事なのか日常なのか、何とも判別は出来ないが、いずれにせよ教会でのイベントごとを日本人だけで何か行っているという印象がない。現代の日本でクリスチャンが一般的である、とは言い難く、なんなら物珍しいぐらいは言っても誤りではないのではないか。

大航海時代の幕開けと共に、教会の関係者が現地を訪れ布教を試みた筈の地域は、現在どうなっているだろう。日本もだいぶ時期がずれてはいるだろうが、アフリカとか南米と同じように教会関係者の西洋人がやってきた地域ではある…。当時日本の様に諍いがあっただろうか。今は南米、南アフリカはキリスト教に染まってしまった。日本ではそうならなかった、その原因を、作中のような江戸時代の政治的判断だけに求めて良いものだろうか。いや、その疑問に答える趣旨の作品ではねえと思うんだけど、この宣教師を野良のクジラに見立てたような思想をする人がですね、云々。

作中の「英語を理解する日本人が沢山いる、なんなら貧しい村にも」という設定は映画の都合すぎてズルい。サイヤ人が地球の言葉理解するみたいな。もうエスエフを感じてやまない。そんなわけねーだろってなる。他の村と道が繋がってないような海沿いの山間で…。当時は文字だって読めない人が殆どだった、というのが自分の知る処であるが、どうだろう。ま、そのぐらいのご都合は映画なんだから世の中にいっぱいある。あるんだけど、この宣教師と日本の人々のやりとりは、この作品のメインの部分じゃないかと思う。それをこんな違和感を覚えたままで消化するしかないのか…。あっ。よく考えたら原作があるじゃないかこれ。原作もこうだったんだろうか。ポルトガル人(?)が日本に来て英語で農村の村人と会話する。史実はどうだったんだ?キリシタンは実在したんだろうけど、宣教師と会話??

映画自体は面白いと思うけど、”転んだ”宣教師とのやり取りの場面もなんとなく迫力欠いたなーとか思ったり、先に挙げた言葉の問題もあったりして、いまいちスッキリしなかった。エスエフではなくてもフィクションではある。わかっているけども。文字表現だと何故かペラペラ会話が成り立っても、その描写を読むこと自体に違和感は憶えない。ところがこうもはっきりと映像にしてしまうと怪奇にすら感じる。胡散臭いわ。史実はどうだったんだ。宣教師など来ていない、ぐらいのほうが真実味があるのではないか。

クリスマスがもう近い。結婚式はチャペル、新年の祝いは神道、死んだら仏教。柔軟なのか節操がないのか混沌なのか。100年内戦が続いても元首は形式上は敬われ、おそらくは面倒事を押し付けられるような恣意的な利用されたりもしつつ、曰く、少なくとも1000年の歴史がある。まもなく200年ぶりの譲位イベントだ。それが神様扱いでもあったんだってさ。人間である、などと宣うも、未だにその位のものだけが執り行う宗教儀式があるとされている。あの神父たちはどう思うだろう。

えーと、その他作品の内容としては音楽がやかましくないのがとても良い。あとイッセー尾形もさすがに歳を取りましたね。しかし兎に角、スムーズに会話がされている事自体の違和感は日本人なら拭い切れますまい。これにつきるかなー。

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