どくしょかんそうぶん

「新幹線大爆破」を観た

人々が言うには「スピード」という映画の元ネタになったと。確かに同じ骨子ではあるなあ。以下ネタバレ大爆破。

評判を耳にするに、なかなかの傑作らしい。確かに面白かった。千葉真一が出演しているんだが、若いころのお姿知らないので、どれがその人だか分からなかった。丹波哲郎と宇津井健、高倉健はわかった。女性陣は全くわからず。しかしそれでも、豪華キャストってやつ。面白いとあって不満ない。そういえば「砂の器」の時もそうだったけど、街中の様子とかが昭和だな~~って感じで…もうそれだけでちょっと古い日本映画には一種の趣があると思えてくる。

それにしても、「新幹線」って凄く具体的な素材の名前に、「大爆破」とくれば妙に迫力おまへんか。あまりにあり過ぎて、当時の国鉄は撮影協力を断ったという逸話があるようだ。1975年というのは、クアラルンプール事件なんかもあったような時代で、こういうテロリズム手法と見て取れるような内容を描写した作品が、ものすごく日常的、具体的な舞台で起こるというのは…「お上」のみなさんもピリピリしてたのかもね。

たまたま乗り合わせたヒーローだとか、どっかから派遣されてきた特殊部隊が事件を解決する、のではなくて、現場のみなさんがすったもんだしながら解決に導くプロセスは個人的には好みであるかもしれない。映画的な手法でばっさりカットされていたりするけど、何かこう、場面に活気があるような気がする。本作は時間制限という所が手に汗握るのであって、そら現場のてんやわんやを思うに…自分のてんやわんやを重ねるとウッてなりますううううう。何度目だ。

唐突な喫茶店の火事は流石に「はあ?」って感。ネットのレビューも見てもそうだった。あそこはみなさんツッコミどころだろう。自分も観ている時に、あまりにあっさりと燃えている場面になったものだから、

作中の台詞にも出てきたが、そもそも80km/h以下になったら爆発するように仕掛けるというアイデアは、「何かあったら停止する」という新幹線の安全対策の根本思想に存在する”穴”をついているのがとても面白いと思う。この辺のエピソードはwikipediaにも載っているので目を通すとさらに面白い。ブレーキ壊しても同じじゃねーかとも思ったけど、それには無理やり止めるという手段が残されているが、速度の低下で爆発するんでは走り続けるしかない。パニックになった乗客が非常停止レバーで止めようとするあたりはリアリティがあって実にハラハラする場面。ここにも活気があります。

横道なんだけど、似たような場面に実際に遭遇したことがある。電車に乗っているさなか、近くで人が倒れたらしく、ざわざわと騒々しくなった。誰かが「非常停止ボタンを押して」と言った所、すぐさま「駅まで進んだほうが良い」という声があがった。倒れた人は次の駅で抱えられて降りて行った。うっかり止めてしまうと助かるものも助からないかもしれない。緊急時にはこれを押すなんてところだけ覚えても仕方がないもんなあと思ったのだった。

映画に戻ると…乗り合わせた乗客から度々「止めろ、降ろせ」という声が上がり、乗務員に詰め寄る。自分の乗っている新幹線に爆弾が仕掛けられているという事情を知ってなお、そんなことを言い出す。外に連絡を試みる人たちが車内公衆電話に列をなして並ぶけど、また別の乗客はそこに現金を渡して割り込もうとする。(漫画みたいなだと思ったけど映画だから同じようなもんか)このあたりが高度成長社会における日本ビジネスマンの風刺的な表現である、と他のレビューに書いてあった。今ではそんなこと試みそうなのは反社会勢力とその予備軍のDQN達だけだろうな。映画的表現とは言え時代を感じる。活気があります。

新幹線が無事に止まった後、みんなで万歳三唱しながら近寄っていく場面なんかも、今なら映画にも登場しないだろうし、実際にもやらない。映画の演出でやらなくなるんではなく、世の中から消えていく。万歳って選挙のニュース以外ではもう見かけないんじゃないか?活気活気。

全般的にテンションの高い、緊張感のある展開が続き、長めながらも飽きないと思います。また、実際に起こったら他に何か解決策がないかな?なんて考えながら観るのも面白いかもしれません。ヘリで乗客を吊るには時間も足りなそうだし、電線が邪魔そうだなー、なんて。でもね?現在でこれやられても解決策なんぞなさそうなあたり、新幹線という非常に日常的なシチュエーションであるあたりが手に汗握る要因でもあると思います。

スマホでググって解決した、なんてことになるかもしれねえのも現代ではありますねけど。

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