侵緑の季節

排水溝から一本の草が伸びていた。

のに気付いたのは去年の夏。やがて寒くなるにつれて茶褐色になり、細くなってある日ついに折れた。2014年2月の大雪の時にはすでに折れていたと思う。封鎖した施設の、道路に面した駐車場があり、そこを横切るように伸びる一本の排水溝、その真ん中ほどに伸びていた。日当たり良好、人の立ち入りはなく、勿論動物も立ち入らない。このままわっさ~~~~と増えたら面白いなどと見つけた当初は思っていたのだが、育ちこそすれ、増えずに折れた。排水溝のわずかな泥に根を張っているのだろうけど、見えないのでわからない。周囲に木立もないので、どこからかやってきた落ち葉が溜まって土になる、ようなこともないのかもしれない。

のがまた伸びているのに気付いたのは四月の末ぐらいだったろうか。すくすくと育っていた。「東京幻想」という、廃墟と化した東京のイラストレーションがネットでは人気である。東京に住む人にとって、ああいった姿と成り果てた東京というのは、想像に難くない。兎にも角にも、建造物の姿、位置関係が特定のエリアの顔ではあるから、変わり果ててなおそのフィギュアが残っていれば通いなれたホームからの眺めとすぐにわかる…。

人類文明が滅びないとしても、東京が遺棄されることはあるかもしれない。そうなったときには先に挙げたようなイラストのような景色が実際に展開されるだろう。…排水溝の一本の草に世界の未来が見て取れた、夏日の休日で御座いました。

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