ふでのゆくまま

京へ旅して帰り戻るは我が心であること

十五年ぶりの旅行と言っても差支えない。とあるイベントごとに参加する為に、京都へと一泊二日の旅に出た。国内一泊二日を旅と言うのはあまりにしょっぱい話ではあるけども、実際、旅行というものは大学を卒業してから個人では行ってない。前回行ったのは大学を卒業する直前の真冬で、兎に角すべてが素晴らしかったと記憶している。今回は如何にもな旅行シーズンで、しかも天気が悪そう。出かける直前、折り畳み傘が壊れていることに気付き、傘を持たずに出発。

京都までの往復は新幹線を選んだ。夜行バスはしんどいし、現地到着が早朝になる。とあるイベントごとというのは、19:00スタートであるので、ちょっと避けたい。平日の移動になるから、ラッシュアワーは避けたい。ということで、朝はゆっくり目に出発することにし、ホテルは15:00チェックインと早めの時間。行きの行程は余裕だった。この移動のために買った、マツコ・デラックスのエッセイなど読んで、適宜居眠りをしていると京都に着いたが、やはり二時間以上じっと座っているのも疲れるもんだ。現地は曇り。小一時間ほど時間があったので、そこらをぶらぶらするが、特に面白いこともない。15:00を待ってチェックイン。

昼飯にパンを食いながら、ここで目的地への詳細なルートを調べる。15年前はインターネットなど、なくはなかったけどもそこまで便利ではなかった。今ではホテルの部屋でスマホで詳細な地図の検討までできる。徒歩で二時間半と出た。あれそんな遠いの。電車でも最寄り駅から30分歩くらしい。バスは混んでそうだし、google先生は流石にバスの路線も把握していたようだけど、最寄り駅から徒歩のルートを選ぶ。結果、少々遅刻する。都内と同じ感覚で、適当にのって乗り換えれば着くだろう、ではダメだった。今回は旅行気分をブーストしようと、またスマホの頼りになるから、事前に細かい調べはしてこなかったんだけど、いざ当日という段になってこれは流石にやり過ぎた感があり、結果急いで移動するだけという時間になり、一番旅の気分を損ねるようなものだった。

とあるイベントは文句のつけようもなく素晴らしかった。けども、やはり遠く、床に座って二時間半で、足のしびれに耐えながらでこちらも旅気分には程遠い。確かにこの場所でしか体験しえない夜ではあったのだが。意地になって帰りもだいぶ歩いてから電車に乗り、日付が変わろうかという頃にホテルに着く。雨が降らなくて良かった。これで雨だったらずっとホテルで寝ていたかもしれないww …や、まあタクシー拾っただろうけどね。最初からタクシーで良かったんだよな、今思えば。最近散歩にはまっているからその勢いを持ち込んでしまったが、こら失敗だった。

適当に風呂入り、酒飲んで寝た。外人が廊下で大声で話しておりうるさい。観光都市だからな、まあしょうがない。街中に兎に角外国人の姿が目立った。15年前は真冬で雨の日だったから、何処に行っても観光客の姿はまばらで落ち着いて鑑賞できたもんだが、今回はシーズンど真ん中。明日は観光しようと思っているんだけど、天気はよさそうだし、賑わうだろう。疲れを取るべく夜更かしもしないで寝る。

zzzzz

翌朝6:30起床。だるい。寝起きに夕べ飲み残したスミノフアイスをごぶごぶと飲む。おお旅気分が蘇ってくる。髭剃り用のシェービングフォームを忘れたが、替え刃のローション部分をお湯で溶かして塗り、なんとかした。朝飯はホテルのビュッフェご飯。ビジネスホテルのそれは、ま、贅沢には程遠いけど、嬉しい味だ。京都風の何かがあっても良さそうなものだったが、味噌汁に至るまで東京で馴染みの味だった。インスタントなんじゃねえの。ひじきの煮物も濃ゆい味付けで、薄い薄いカツがメインのおかずという感じ。マカロニサラダ、生野菜、ケチャップ味のスパゲッティに見せかけた何か(これはちょっと美味しくなかった)ご飯味噌汁ふりかけひじきの煮物オレンジジュースゆで卵。パンと牛乳以外は全部いただきました。げふー。沖縄のリゾートホテルの朝食は流石に今思えば格が違ったな。

朝の8:00に開いてる場所もないし、ちょっとゆっくりして、9:00ぐらいに出発。京都駅のコインロッカーに荷物を放り込み、修学旅行生の列に紛れながら東本願寺へ。ここは前回に来た時も早朝から開いていて、よい時間つぶしになった記憶があったが、明らかに近代的な建物が建築されており、遠目にも何事かと焦る。どうも修復工事中らしい。本堂に上がり、天井を見上げながらうろうろ、あまり長居せずに移動。こういう建築物の端正のとれた佇まいと、でかい、というストレートな迫力が混ざった感じだ大好きだ。近代ビルではこうはいかないからな、通路にテナントの看板が置いてあったりしてな。

次は三十三間堂に移動。徒歩を選択したが、普通に街中の道をまっすぐ歩くだけになってしまい、退屈。まあしょうがない、京都だって2014年だし、羅生門におばばが住んでいるわけでもない。天気は素晴らしく申し分ないのだが。三十三間堂に到着する。十五年前と同じ印象、入り口が不自然というか、車も歩行者も同じところから入っていく。600円お支払して中へ。靴の脱ぎ場所を間違えておばばに怒られる。修学旅行生がぞろぞろぞろぞろぞろzろろろろろろろと入ってくる。ここは十五年前、初めて見たときほどの印象はなかった。まあ中学生の群れが、というのもあるけども、あの時は真冬の寒さからくる張りつめた空気が、鈍く光る仏像の存在感を引き立てていたのかもしれない。フランス人のお子様が柵を乗り越えようとして、お母さんに叱られ、泣き出した。やれやれ、という感じでいたのだが、それを見つめる視線に気づく。仏門の女性であろう、短髪で、作務衣といったら良いのか不明だが、グレーの着物に身を包んでいた。三人で行動しており、どうも日本の方ではなさそうだった。ミャンマーあたりだろうか。あの国の人にとって、600円という参拝量ははて如何ほどのものであろうか…。外に出て、天気が良いので散歩コースを歩く。午前11:00に近い事もあり、人が増えてきた。外人の姿も目立つ。

次は清水へ。実は行ったことがない。勢いでここへの徒歩で移動するが、五条坂で力尽きそうになる。家に帰ってから知ったんだけど、八坂からだと風情がって混んでなくてよいらしい。五条坂はお土産やが軒を連ね、修学旅行生と外人でもう休日の新宿原宿と大差ないわーい。もうムキになって坂をのぼっていく。売り子が「XXX中学校の人~見てって~」と声をかけている。うわあ鬱陶しい、これ前に来た時もいたなー。……。え?前に?もしかしたら初めてじゃないのか俺。高校生の時に、どこかでそんなのがいて、鬱陶しいなーあれなーなんてみんなで喋った記憶があった。うーん。

登りきると、想像以上に立派な門と、高いところに寺があった。参拝料払って、しょぼいしおりみたいなもの貰って…このしょぼいしおりも見覚えが…。ちなみにこれなくても逆ルートで入れる。阿呆か。新緑の季節、快晴。この上ないロケーションで、見晴らしも素晴らしい。風も心地よい。これは良かったが、やはり人が多すぎるなあ。「清水の舞台」ってここの事で、確かに京都が一望できる。何度か焼失しているようだから平安の都の頃に今と同じ眺めだったとは限らないけども、当時の眺めはどんなだったろうか…。階段を下りて、舞台を見上げると、ちょうど飛行機雲が横切っていた。今回のベストショットはこれか。

坂を下りて、さて、金閣寺、といったところでスケジュール的に時間が微妙なことに気付く。そこらの裏路地に入って京都っぽい街並みでもないものかと思うが、何とか製作所の倉庫に辿り着き、「こっち行き止まりよ~」などと言われてしまう。そんな調子でさらに20分ほどウロウロ。六波羅蜜寺なんて格好いい名前の寺もあったけど、横目にちょっとみて通り過ぎた。座って休める広場でもありそうな寺を目指す。googleMapで目に付いた一番大きな緑の四角に向かったというだけなんだが。それが建仁寺という寺だった。

素晴らしかった。実際のところ、横になれるベンチでもないかと期待したのだが、そんなもん無くてがっかりして適当な縁石にへたり込んでいたんだけど、なんとか竜公開とあったので、中に行ってみるかと窓口に。萌えキャラ系のお姉さんに「写真大丈夫ですので~」なんて言われたから時間調整の暇つぶしにはいいか、なんて思ったんだけど、いきなり教科書で見たことのある風神雷神図が置いてあったり(※高精度デジタル複製)、縁側に腰掛けて休憩もできたし、庭の風情も良く、畳に寝転ぶ人までいる。結局ここで一時間も過ごしてしまった。そして法堂にある天井の双龍画の迫力は圧巻であった。たまたま辿り着いたにしては大当たりで、いやー歩くとこういうことがあるんですよ、と一人ドヤ顔をして後にする。外の通りも相当な賑わいで、地元民とみられるおっちゃんがそこらで新聞を広げているあたり、現在の京都の中にある寺社の、…ってすぐ隣にウィンズがあった。いやー。東寺も通りの向かいにパチンコ屋があったりして、現代社会だねえって。建仁寺も祇園のど真ん中でもあり、四条の繁華街も近い。マチュピチュじゃねえんだからなあ、リアル都市の中に揉まれているんだなあって思った。

神戸へ移動。某氏と十年ぶりにお目通り叶った。お互いに十歳老けた筈なんだが、少なくとも自分は変わらないな、という印象。歩く速さも変わってねえわ。追いつけねえんだよwww彼が所用を済ます間、車の中で待っていた。外は冷たい風が吹いてきて、ボストンバッグの中のナイロンパーカを手持ちのバッグに移し替えた。ぼんやりと、外の眺めに目をやると、鳩と戯れている青年がいた。パンくずを風に乗せて高々と投げあげて、嬉しそうであった。この寒空に半袖のポロシャツ一枚だった。鳩がパンをついばむと満面の笑みでそれを見つめていた。すぐそばにフードをすっぽり被って寒そうにしている女性がいて、時折話しかけている。どういう間柄なんだろう。ちょっと前に某女優が精神を病んだとか皇居に突撃をしたとか噂され、野良猫に餌をやって過ごしているという記事を読んだ事がある。落ちぶれた、という内容であったが、「素晴らしい人生じゃないの」というコメントが印象深く心に残っている。人生とは…鳩に囲まれた二人を見て、物思いにふけった。女性は寒さに耐えかねてその場で足踏みをしている。親子だろうか…。

その後、「好平」というお店で晩飯をゴチになる。さらには新神戸まで送って頂き、おかげで想定より二本ぐらい早い新幹線に乗れた。疲れが溜まっていたし、来るときよりも長い時間の乗車で、酒も入っていたし、すぐに寝入ってしまった。という前にトイレに行った隙に席が取られていたりしたんだけど。名古屋を出たあたりで何度目かの目覚め。ちらりと横を見るとお姉さんも爆睡しておる。その向こうのおばちゃんも、その隣のイケメンのサラリーマン風も。首を振って見渡せる限りではみんなぐったりと寝ていた。悲劇の事故直後の画像が流出したといっても信じる。何もかもが疲弊している。まずは寝ていられるだけの安定と平和に感謝するべきなんだろう。家に帰っても家具がすっかりなくなっていた、なんてこともない。

やる気のない人生を過ごしている身には、久しぶりに濃い時間ばかりが流れた旅でありました。みんなありがとう。

人生とは?
人生とは?
建仁寺の庭
建仁寺の庭
清水の舞台の下から
清水の舞台の下から
山間の地にて
山間の地にて

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